禁煙 待ったなし!

たばこをやめるための4つの心得


 
 日本循環器学会の禁煙推進委員会によると、たばこの煙にはニコチンに加え、一酸化炭素をはじめとする7,000種類以上の物質が含まれている。たばこの煙に含まれるニコチンは、交感神経系を刺激して、末梢血管の収縮と血圧上昇、心拍数の増加を引き起こす。

 さらに、たばこの煙に含まれている一酸化炭素は、血液中のヘモグロビンと結合して、酸素欠乏状態を引き起こす。たばこの煙はコレステロールの変性を促し、血管内皮を傷つけるだけでなく、善玉のHDLコレステロールを減少させ、動脈硬化を促進する。

 

 脳には、ニコチンが結合すると快感が生じる受容体がある。たばこを吸うと、ニコチンが肺から血中に入りすぐに脳に達する。ニコチンがニコチン受容体に結合すると、快感を生じさせる物質(ドパミン)が放出される。ドパミンが放出されると快感が生じるので、さらにもう一度たばこを吸いたくなる。

 

 これを繰り返すうちに、イライラなどの離脱症状(禁断症状)が現れるようになる。それを避けるため、喫煙をやめられなくなる。たばこを吸い続けており、やめようと思ってもやめられない状態は、「ニコチン依存症」という立派な病気だ。

 

 最近の研究で、ニコチン依存症に対して薬物療法が、心理的依存に対しては行動療法が効果的であることが分かってきた。日本循環器学会は「たばこをやめるための4つの心得」として、次のことをアドバイスしている。

 

喫煙がんの原因に 心疾患・脳卒中・糖尿病のリスクも上昇

 たばこはさまざまな健康障害を引き起こす。厚生労働省の検討会は9月に、「喫煙と健康影響」に関する報告書(たばこ白書)をまとめた。

 

 たばこの煙には60種類以上の発がん物質が含まれている。煙の通り道はもちろん、唾液や血液に移行したり、消化管や血液の経路などでもリスクが高くなる。たばこ白書では、喫煙はさまざまな部位のがんを引き起こすことから、喫煙とがんの関係は「レベル1」と判定された。

 

 たばこは循環器疾患も引き起こす。喫煙によって血管の壁が傷つき細胞の機能不全につながり、血液の成分も血栓が作られやすくなり、酸素運搬能が低下するなど複数の要素が循環器に影響する。虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢性動脈硬化症についても「レベル1」と判定された。

 

 たばこは、2型糖尿病の発症とも関連がある。喫煙は交感神経を刺激して血糖を上昇させるだけでなく、インスリンの働きを妨げる作用がある。さらに、たばこを吸い続けると、脳梗塞心筋梗塞、糖尿病性腎症などの合併症のリスクも高まる。禁煙によって耐糖能異常が改善するなど、リスクが減少するのは明らかで、「レベル1」と判定された。

 

 たばこは喫煙者以外にも受動喫煙の弊害をもたらす。受動喫煙によって肺がん(レベル1)、乳がん、鼻腔・副鼻腔がん(レベル2)のリスクがそれぞれ高まる。受動喫煙は虚血性心疾患と脳卒中のリスクも上昇させる。